日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第51巻第1号
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─ 15 ─出する(表面銀)ため,次の膨潤作業に先立ち,紙ワイパー(キムタオル,日本製紙クレシア)と無水エタノール(99.5%)で,一枚ずつこの表面銀を丁寧にふき取った(Fig.11)。5 膨潤作業原子核乾板は,現像を行うと乳剤層の臭化銀が溶解するため薄くなり,厚み方向の測定に影響を及ぼす。このため,全自動飛跡読み取り装置での解析作業の際に,データ取得効率の低下やノイズの増加を招く。膨潤作業は,薄くなった原子核乾板をグリセリンで厚くし,この問題を低減させる。今回の膨潤作業では,上記の観点から,乳剤層の一番薄い部分であっても60μm以上とするために,膨潤後の乳剤層の平均厚目標を70μmとした。膨潤作業は2016年6月26日から同年7月19日の期間で行い,次の手順で進めた。まず,水浸用の水(41L)を用意し,それとは別にグリセリン水溶液(41L)の調液を行った。その調液は当初手作業で攪拌していたが,後にスターラー(Fine社 FS-01N)を使用することにより時間短縮を図った。膨潤前の原子核乾板の厚み測定(測定箇所は原子核乾板の4角)を行った後,水浸を行い,水浸中も厚み測定を複数回行った。水浸で目標の厚みに達したものをグリセリン水溶液に20分以上浸し,水とグリセリン水溶液の置換を行う。膨潤速度の調整は,水浸用の水温と,グリセリン水溶液の濃度によって制御した。水温は,20℃,25℃,30℃,そして,グリセリン水溶液の濃度は,30%,33%,35%をそれぞれ用意した。水温が高いほど,溶液の濃度が高いほど膨潤が早く進むので,目標値に近づけるように,時間調整しながら各原子核乾板の膨潤の度合いに応じて適宜組み合わせを変えた。膨潤処理が終了した原子核乾板は,準備室に設置した乾燥棚に吊り下げて乾燥した(Fig.12)。乾燥時には除湿機を稼働させた。また,吊り下げ時には,原子核乾板の下辺に溜まるグリセリン水溶液が原因でその箇所だけが厚くならないよう,紙ワイパー(ケイドライ,日本製紙クレシア)で余分なグリセリン水溶液を丁寧に吸い取った。乾燥後は,膨潤作業による厚み変化を確認するFig.10 Nuclear emulsion plates during washing with water.Fig.11 Wiping silver on the surface of a nuclear emulsion plate.Fig.12 Drying of nuclear emulsion plates after swelling.Fig.13 Distribution of thickness at the plates after swelling.

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