日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第51巻第1号
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─ 14 ─握する必要があった。そこでweb上から温湿度の監視が行える,遠隔式温湿度測定装置(おんどとり, TR-72ef[T&D社製])を導入し,暗室の温湿度を10分間隔で監視7)できるようにした。Fig.8は実際の監視画面である。これによりインターネットに接続さえできれば,温湿度をどこからでも把握できるようになった。その結果,暗室のエアコンが正常に稼働していることや,現像室,準備室の環境に異常がないかの確認を行えるようになった。4 原子核乾板の現像作業前述した現像室・準備室の環境整備後,原子核乾板の現像処理にとりかかった。今回は,茨城県にあるJ-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)にて2016年1月31日から5月27日の期間でニュートリノビームを照射した原子核乾板を日本大学に運び現像した。本実験は原子核乾板を用いて,様々な物質と素粒子のひとつであるニュートリノとの反応を調べる素粒子実験である。当初テスト実験としてJ-PARCからT60実験という名称で許可され,その後本格的に採択され,現在ではNINJA (Neutrino Interaction research with Nuclear emulsion and J-PARC Accelerator) 実験と呼んでいる。この実験には日本大学(生産工学部),東邦大学,名古屋大学,神戸大学,京都大学,東京大学が参加している8),9)。生産工学部での現像作業は,2016年5月28日から同年6月6日の期間で行い,現像は次の手順で進めた。まず,明室状態で,現像液(54L),停止液(41L),定着液(41L)を調液した(Fig.9)。それぞれ用いた薬品は,記述順に,オペラ実験用現像液(富士フィルム),酢酸,インテグラシステム定着剤 NF-1(富士フィルム)である。現像缶は,この溶液量を収めるために特別に注文したステンレス槽(内寸:350(W)x550(D)x300(H),SUS304)を用いた。現像液等の溶液は,調液に際し溶液全体の濃度が均一となるよう,攪拌棒を使いよく攪拌した。調液後は,各溶液槽に,アクリル板または専用のプラスチックの蓋をし,不純物の混入や空気酸化の影響を最小限になるようにした。各溶液の液温は,現像液が20±0.2℃,停止液が20±0.5℃,定着液が20±0.5℃になるようにマルチサーマルユニットとヒータ(F-002[Fine社製])を用いて調温した。また,原子核乾板を溶液に浸す際には,直前に液温を温度計にて再度確認し,必要であれば調温を繰り返した。現像作業そのものは,ストップウォッチを用いて時間計測しながら,暗室状態で,原子核乾板を現像液に25分,停止液に10分,定着液に60〜120分順次浸し,その後,水洗(水浸)を行った(Fig.10)。そして,現像前後の原子核乾板の厚みを,厚み測定器(ダイヤルシックネスゲージ 0.01mmタイプ ピーコック形式:G)を用い,原子核乾板の4角を時計回りにそれぞれ測定した。原子核乾板の乾燥は,乾板を現像室から準備室へ移しスチールラック(乾燥棚)に吊るした。一度に8枚ずつの現像を基本とし,一日に48枚から54枚現像と乾燥を行った。最終的に本期間中に現像した原子核乾板は,250mm×250mmのサイズが284枚,250mm×300mmのサイズが34枚,計318枚である。現像作業後の原子核乾板の表面には,銀の微粒子が析Fig.7 Temperature and humidity stability of the development room from Feb. 2 to 5, 2016.Fig.8 A monitoring screen of temperature and humidity via internet.Fig.9 Preparation work for developer

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