環境保全のための高比強度構造部材用生産技術の確立と
その実用化のためのヘルスモリタニングおよびシミュレーション技術の応用 プロジェクトリーダー 教授 邉 吾一 一方で,現在でも大規模地震による家屋やビルの倒壊,橋や道路の欠壊,石油タンクのスロッシング破壊,原子力発電施設における高圧蒸気用配管系の経年変化に破壊等によって,多くの人命が失われ,これらの破壊によって環境に甚大な悪影響を与えています。さらに,自動車の排気ガス等による地球温暖化等,これらの問題解決が社会的に強く要請されています。 経年構造物の安全性や地球温暖化抑制などの環境保全のために,経年特性に優れた高比強度の材料とそれを用いた構造,その構造の使用時の安全性について非破壊検査を応用したヘルスモニタリング技術やコンピュータシミュレーション技術で得た平成16年度に終了しましたハイテクプロジェクト整備事業での学術的な成果を企業との共同研究を実施することにより実用面で応用し,研究成果の有用性を検証し,発展させるために,ハイテクプロジェクトの継続事業として,これまでの研究成果と現在行っている研究テーマとの関連性をテーマごとに以下に具体的に示します。 1)大型FRP構造の地震時の構造安全性を確立し,FRP材の材料としての耐候性強度を体系的に明らかにしましたこれまでの成果をベースにして,従来のFRPの欠点であるリサイクル性と難燃性を改善しました高比強度・高剛性のフェノールフォーム複合材を開発します。さらに,この複合材を合理的に生産する手法を企業との共同研究で開発し,車両,船舶,航空機などの軽量構造に応用し,環境保全と省エネに貢献します。 2)前プロジェクトの急冷凝固法による研究において,室温および200℃における引張強さが,それぞれ700MPaと400MPaを越える高強度材料を得ましたが,本研究では急冷凝固法を一層発展させ,より大きな高比剛性と高強度を発揮するアルミニウム合金を創製し,企業との共同研究で高温強度が要求される部品,例えばエンジン部品への実用化を図り,これら部品の軽量化を達成することにより省エネに貢献します。 3)ガソリン機関の熱効率向上のために希薄予混合気中に微小燃料液滴を浮遊させることにより,同一濃度の完全予混合気よりも10%ほど火炎伝播が促進されることを前プロジェクトでは明らかにしましたが,本プロジェクトでは一層の熱効率向上を図るため,超希薄燃焼と高圧縮比化を実現し,温暖化抑制に貢献します。さらに実用化にあたっては2)の研究項目の耐熱軽量高比強度アルミニウム合金との連携が不可欠となります。 4)鉄筋コンクリート部材が車両の走行による疲労荷重を受ける場合の安全性を評価するために,RCはりの曲げ・せん断耐力ならびに破壊メカニズム,RC版の押し抜き算定式の修正提案をこれまでの研究で行ってきましたが,本研究では新複合材料を土木構造物に実用化するために,企業との共同研究を通して,新複合構造体の耐久性の向上を図り,省資源と省エネルギーに貢献します。 5)前プロジェクトの研究では,構造金属材料の表面探傷のために,従来に比べて雑音の小さい渦流探傷プローブを開発することができましたが,本研究では開発したプローブを実物の金属構造物に適用するだけでなく複合材構造にも応用し,非破壊的手法によるヘルスモニタリング技術を確立し,構造物の補修を可能にして廃棄物の減少を計り,環境の保全に資することが目的であります。 6)移動境界を有する複雑流れのコンピュータシミュレーションを効果的に実行するための有限要素スキームを開発した前プロジェクトでの成果を構造物内の欠陥や損傷等を同定する逆解析に応用します.構造内部に欠陥や損傷がある場合の構造物の応答特性から欠陥や損傷位置と大きさを同定するコンピュータシミュレーション技術を開発し,その技術を通して環境保全に貢献します。 日本大学生産工学部ならびに大学院生産工学研究科は,機械工学,電気電子工学,土木工学,建築工学,応用分子化学,管理工学,数理情報工学の7学科・専攻を有しております。創設以来,工学の全分野について,生産に強い技術者を養成する立場で教育研究を行ってきております。その研究分野に関わる事項を統合かつ総括しているのが生産工学研究所であります。 研究テーマ ● リサイクル性と難燃性を考慮した高比強度・高比剛性フェノールフォーム複合材の |