我々教員にとって、4年間(又はそれ以上)をかけて育てた諸君の先輩を社会に送り出し、ほっとした後、元気一杯で眼をきらきら輝かせ希望に満ちあふれた新入生を迎えることは、新しい年を迎えたという楽しさと共に、新しい責任を感ずるものです。一方、生産工学部の数理情報工学科という日本大学で唯一の学科に入学を許され、この手引を手にする諸君は、これから新しく始まろうとする大学生活に対し大いなる期待とともに幾分かの不安を抱いていることと思います。そこで、最初に、これからの諸君の大学生活の展望と諸君に望むことがらを卒直に述べていきます。 第一に確認しておきたいことは、ここで勉強するのだという決心です。諸君には入学に際して、当科が第1志望であるとか、第2志望であるとかというこもごもの事情が存在していたかもしれません。しかし迎える我々の方は、諸君が望んで当科に入学したということを前提とし全てを考え、教育していくということです。これは大変重要なことであり、この両者間の了解こそ、大学という制度が成立する基本条件です。当学科での学修を魅力的で興味深いものにするために我々はいつも努力しているので、諸君も安心して勉学に励んで下さい。すなはち、一度入学を決断した以上、前向きの姿勢で進んでいただきたい。入学したその日から、この心構えをきちんと作ることが、大学生活に成功をもたらす第一の鍵となります。 <大学という知的空間> 大学生活は人生における最長の休暇であるという説があります。この休暇の意味を、ひとりひとりの使い方によっては非常に変わってくる自由な時間と考えるならば、むしろ、この人生最長の休暇を有効に使用するという考え方に立って、大学生活を考え56 Mathematical Information Engineering なければ損です。学ぶこと以外に余り束縛のない豊富な時間を一つじっくり生かして見ようと考えるならば、期待にふるえ胸が高鳴ってくるはずです。 一旦社会に出て、与えられた仕事による生活を送るようになれば、毎日、仕事をこなしていくことに追われてしまい、じっくりと物事を考えることが出来なくなるのが、多くの人の現実です。その中でも自主的・創造的に仕事を一つ一つこなしていくための知的能力を身につける場所こそ、大学ではないでしょうか。科学技術と社会の複雑化に伴い発生する、困難な問題に対応し、それを解決するのは単なる知識ではなく、たくましく強靭な思考力が要求されます。このような思考力を養うのが大学の目的です。この点では大学の教育研究は相互的なもので、我々にとっても諸君の若い力の刺激が必要であり、教える、教わるということだけでなく、共に語り、議論するという過程によって共に成長することを期待しています。 こここころろががままええ
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