Department of Conceptual Design 33 当研究室では、構造力学や微分幾何学,数理情報工学などの物理・数学の理論と手法に根差した「形態創生」・「最適化」を対象とした研究を行っています。研究テーマの多くは「建築構造」分野に含まれ、安全かつ美しい建築物や製品を合理的に設計・製造する手法を提案します。建築構造とは、ざっくり言うと建築物を支える柱や梁などの部材の設計を担う分野であり、重力だけでなく地震や台風など様々な荷重に対する安全性の担保を第一の目的としています。安全性の確保には、柱や梁を単純に太くすることもできるかもしれませんが、それでは魅力的な空間は実現できませんし、コストの面でも合理的ではありません。また、ドーム屋根などの曲面構造は形が少し変わるだけで、荷重に対する性能が大きく変わってしまいます。構造設計者は上記のような課題に対して、力学や幾何学などの知識を駆使し、強いだけでなく経済的で美しい建築物を作り上げることに貢献しています。 プロダクトデザインでも、構造は重要な役割を果たします。例えば、椅子の設計では、まず座る人の体重を支える強度が必要です。しかし、単純に強くするだけでは重くなってしまい、使いづらい椅子になってしまいます。また、多くの材料を使用するので価格も高くなってしまうかもしれません。構造デザインは強度・重量・価格、そして美しさを兼ね備えたものを実現するために、欠かせないプロセスです。 冒頭で触れたように、物理や数学の知識が必要であり、複雑な難しい計算をする研究室というイメージを持つかもしれません。しかし、構造デザインの本質は計算ではなく、空間や製品の形態を決定するための寸法や強度、重量、価格といった諸条件を整理し、それらを合理的にまとめあげるための手法・手続き(アルゴリズム)を言語化する論理的思考にあります。これはデザイン全般で必要とされる普遍的な能力です。 近年はコンピュータや計算アルゴリズムの進化にともなって、複雑に絡み合う様々な条件を扱うことが容易になってきました。また、3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション機器も広く普及してきています。本研究室では、こうした文明の利器のパワーを用いて、人々の暮らしをより豊かにする構造物の形態を探索します。研究対象には、ドームなどの曲面構造、折紙構造、可動構造などが含まれます。 〈ゼミナール〉 ゼミナールではモノのかたちの裏にある構成原理について文献調査や実地調査を行い、調べた内容を自分なりに解釈して発表します。また、複雑な諸条件を数理的に扱うための「最適化」や「コンピュテーショナルデザイン」といった手法について学びます。個々人が興味を持った形態について、その形態を構成しているアルゴリズムを自分なりに解釈し、デザインに適用する手法を検討します。検討した手法はメンバー間でのディスカッションのなかで発展させ、プロジェクト等を通して実装します。 〈卒業研究〉 これまでの学修内容をもとに、各自、興味のあるテーマに取り組みます。ゼミナールで取り組んだテーマを発展させてもよいでしょう。強制ではありませんが、建築構造を研究の基礎のひとつとする研究室ですので、3年次に開講される材料力学演習と構造力学は是非とも履修して研究に取り入れることを期待します。 はやかわ助助教教 早早川川けんたろう健健太太郎郎研研究究室室 40号号館館612室室 Tel:047-474-2319
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