54 ット,航空機,鉄道車両,自動車,船舶)製造技術への適用が急速に進んでいる.一方で,摩擦攪拌接合にしか見られない特徴的な欠陥が形成されることがある.この欠陥がどのようにして形成されるかを知り,いかにして防ぐかを技術として確立せねばならない.接合に使用する工具や接合条件に工夫を凝らして材料の挙動を制御し,欠陥の形成防止と接合部の特性改善を進めている.②摩擦圧接装置の試作,摩擦圧接の機構解明,およびその応用 摩擦圧接は摩擦攪拌接合と異なり,接合工具を必要とせず,接合する面どうしを摺動させて発熱と変形を生じさせて接合する技術で,エネルギー効率に優れた接合技術である.しかし,接合中に界面で生じる現象は非常に複雑で,解明が進んでいない.これを解明することで,より効率的かつ高機能な接合の実現,さらには応用技術の開発につなげていくための土台作りに取り組んでいる. ③超音波接合における接合機構解明と配線実装工程への応用 超音波接合は電子素子の配線実装工程に不可欠な接合技術である.情報処理用電子素子は年々小型化するとともに1素子あたりの接合点数が増加している.配線材には主として金が使用されるが,より電気伝導度が高くコストが低い銅配線への転換が求められている.一方,電力制御用電子素子は構造こそ単純であるが,素子1個が制御する電力が増大している.配線材には高純度アルミニウムが用いられており,高負荷化に伴って配線材の太径化や多線束化,撚線化が必要となっている.さらに近年は環境負荷軽減の観点から,はんだ付けに替わる接合技術としても超音波接合を用いた直接実装が期待されている.しかし,接合過程で生じる現象や接合機構の理解は進んでいない.この短時間のプロセスを適切に制御するには,接合機構の解明が不可欠である.④各種エネルギーを利用した難加工材の加工技術の開発 溶接接合に利用されている各種エネルギーを応用して,従来加工困難とされていた材料を加工する技術を開発している.エネルギー入力に対する材料の応答挙動を解明し,その知見を利用して新たな加工技術に活用する.3. 研究設備 摩擦攪拌接合装置をはじめとする種々の材料加工装置を利用して加工工程における材料の挙動を直接計測するとともに,製作したサンプルの材料組織を解析することになる.そのための固有設備を順次導入して研究環境を整えている.多くの場合,装置に組み込むジグやサンプル形状等を自分の研究テーマに合わせて考案・製作・改良を繰り返すことになる.右図は学生が自作した,ねじり角計測器である.この活動においても,コミュニケーション能力が鍛えられる.4. その他 当研究室で得られる成果は社会で活用されてこそ価値が生まれる.社会で活用されるためには学会や国際会議での発表討論,学術論文投稿,特許出願等の方法により,まずは知ってもらわねばならない.この活動を通して学外の関連分野での人脈を広げ,学外の研究機関や企業との共同研究へと展開する.自分らの成果が社会基盤を支えていることを実感できる研究室づくりを心がけている. 学生自作のねじれ角計測器
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