※記載されている学年は取材当時のものです。

娘が生産工学部の建築工学科を選んだときも、そのために上京すると言い出したときも、不安や心配はそれほどなかったんです。もともと地元の大学に進学する考えもあったようですが、一方では都会の大学へ進み、たくさんの仲間や先生たちに出会いながら、もっともっと視野を広げてほしいという願いがありました。入学以降、連絡は密に取りあっています。週に1〜2度、近況を報告してくれるのが楽しみで。

彼女の話を通して感じるのは、素晴らしい環境でキャンパスライフを過ごしているということです。都心にアクセスしやすい郊外にありながら、昔ながらの商店街もご近所にあって、娘を一人暮らしさせる親としては安心感があります。高校生の頃は受験勉強に明け暮れ、身体を壊してしまわないか、傍で見ていて辛くなることもありました。 その娘が、自分で見つけた“大好きなこと”に取り組み、いきいきと授業の様子やその楽しさを私に聞かせてくれる。これほど嬉しいことはありません。

ちょうど卒業後には、東京オリンピックが控えています。せっかく建築という分野を志したのだから、何か記念になるような仕事に携わってほしいですね。いつかは彼女がデザインした家に住んでみたいという夢も持っています。建築というと男性の世界というイメージが強いかもしれませんが、今の時代、女性がそのフィールドへ果敢に飛び込んでいくことも決して珍しくはありません。生産工学部を選んでよかったと心から思っています。

高校時代、渡米するチャンスを得ました。ふるさとの岩手県が主導する人材育成プログラムに選抜され、短期間ながらニューヨークやワシントンを視察してまわる研修旅行に参加することができたのです。そこで、とある建築事務所を訪れたとき、世界が広がりました。住宅はもちろん、セントラルパークのような野外空間、さらには都市づくりまで、実は細部にわたって人の手が加わっていることを知ったんです。病院を営む父を継ぐべく、それまで医師を目指していた私の目標は、いつしか「建築家」へと変わっていきました。

母とは、自分でいうのも照れくさいのですが、とても仲がいいと思います。まるで姉のようになんでも相談できて、いつも的を射たアドバイスをしてくれる存在。建築を学びたいという私の背中をそっと押してくれたのも母でした。「あなたはしっかりしているから大丈夫。自分が信じた道を進みなさい」という言葉に何度勇気づけられたことか。

選んだのは、住まいに関わるデザインを学ぶ「居住空間デザインコース」。学習領域は想像以上に幅広く、毎日が驚きと発見の連続です。魅力的な先生方の講義を聴くのが楽しくて、実践的な課題にも興味は尽きません。友人もあっという間に増え、互いの家を行き来しながら模型制作に勤しむことも。これから学んでいきたいのはインテリアです。軽音楽サークルに所属していることもあって、音響についての知識も掘り下げていきたいです。日々、自分の成長を感じています。