日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第52巻
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─ 5 ─能力や資質(本研究の場合は授業満足度)を反復測定する場合,自己相関をモデルに含んだ分割時系列分析を行うことが必要となる。本研究では英語授業満足度を評価する学生が年度により異なることを考慮して,自己相関を考慮しない回帰不連続分析を用いた。2017年度からクォーター制が導入された(教育的な介入が行われた)ことから,本研究の場合,閾値は2016年度後期と2017年度第1クォーターの境となる。したがって2015年度と2016年度の学生が比較群(割り当て:T=0),2017年度の学生が介入群(割り当て:T=1)と定義した。それぞれのデータに対し単回帰分析を行い,2016年度後期と2017年度第1クォーターの授業満足度推定値を比較することで,クォーター制導入による条件付き平均介入効果を算出した。すべてのデータ分析は統計解析環境Rによって行われた(R Core Team, 2016)3)。3.結果表4に2015年度から2017年度における英語必修基盤科目の授業満足度の記述統計量を示す。図2はセメスター制およびクォーター制それぞれにおける授業満足度の回帰分析による期待値を示している。授業評価アンケートを行った時期(x)を1~8とした場合(2015年度前期から2017年度第4クォーターに相当),介入群と比較群の授業満足度の期待値は次の回帰式で求められた:(1)Y介入群 (T=1)=0.03x+3.87(2)Y比較群 (T=0)=0.04x+3.93閾値における介入群の期待値(2017年度第1クォーター:x=5)は4.02,比較群の期待値(2016年度後期:x=4)は4.08だったことから,クォーター制導入による授業満足度に対する条件付平均介入効果は−0.06となった。効果量dは−0.24でありPlonsky and Oswald(2014)4)の基準ではクォーター制導入による授業満足度の低下は最小限であるという結果になった。すなわち,セメスター制と比較してクォーター制における授業満足度はほぼ変わっておらず,スムーズな移行が行われたといえる。一方,クォーター制の導入によって英語授業の満足度が有意に向上するわけではなかった。図1 乱数シミュレーションに基づく回帰不連続分析による介入効果推定のイメージ.点線は比較群(●)および介入群(▲)それぞれの回帰直線.表4 2015年度から2017年度における英語必修基盤科目の授業満足度PE IA/IA(S)PE IB/IB(S)PE IIA/IIA(S)PE IIB/IIB(S)PE III/III(S)PE IV/IV(S)年度nMSDnMSDnMSDnMSDnMSDnMSD2015363.910.34384.000.44383.960.36344.140.31353.960.35334.020.282016333.920.28374.130.28334.050.26374.150.25333.990.28334.050.252017364.080.27354.050.41364.090.34364.190.29343.950.33364.060.25注.PE=Practical English,nは授業数を表す.

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