日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第52巻
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─ 4 ─1.3 クォーター制における英語授業の満足度ここまで,セメスター制とクォーター制それぞれにおける英語必修基盤科目の運用状況を記述し,その差異を比較してきた。クォーター制の導入が教育効果にどのような影響を与えているのかを分析することは,今後の英語必修基盤科目の運用方針を定める上で重要なデータとなる。現在のところ,教育効果を測定する上で必要な,英語運用能力を評価する標準化テストは実施されていないため,本研究では学生による授業評価の結果を1つの指標とする。ファカルティ・ディベロプメント(Faculty Development,以下FD)を推進するために,日本大学生産工学部では「学生による授業評価」が実施されている。生産工学部における授業評価はアンケート形式で行われ,学生から教育改善に役立つ意見を収集し,授業改善にフィードバックすることが目的とされている(山川,2015)1)。学校評価の一環として位置づけられる授業評価アンケートは,継続的な教育改善・教育サービスのために,学生の批判・要求を知り,授業および教育環境を可能な限り改善し,教育の質的向上を図るための資料として利用されている。2004年度からは,教育開発センターのFD推進委員会が,授業評価アンケートの全学統一の調査項目に関するデータの分析方法について検討を行っている。山川(2015)1)によると,収集されたデータは項目ごとに時系列で比較されている。その中でも「総合的に判断して,この授業は意義のあるものでしたか」という質問項目は授業の満足度を反映するものとして分析されている。これに倣い,本研究でも日本大学生産工学部における英語必修基盤科目運営の一環として,クォーター制の導入によって英語授業の満足度がセメスター制と比較してどのように変化したのかを分析し報告する。2.研究方法2.1 データ収集英語授業の満足度データとして,日本大学生産工学部教育開発センターが公開している授業評価アンケートの結果を使用した(http://www.cit.nihon-u.ac.jp/about/activities/faculty-development/center)。2017年度のクォーターシステム下における英語授業の満足度データは,Practical English IA(第1クォーター),IB(第2クォーター),IIA(第3クォーター),IIB(第4クォーター),III(第1・第2クォーター),およびIV(第3・第4クォーター)から成る。比較群として使用したセメスター制における英語授業の満足度データは,2015年度および2016年度の同一科目群であった。2.2 分析方法各科目群を担当する教員や授業を評価した学生が各年度で異なるため,単純に授業満足度の平均値を統計的に比較することは好ましくない。様々な要因によるバイアスを可能な限り排除するために,本研究では英語授業の満足度を比較する方法として回帰不連続分析を使用した。Thistlethwaite and Campbell (1960)2)による回帰不連続分析は,教育的介入等による因果効果を推定する準実験デザインである。回帰不連続分析は,ある連続変数の値が特定の閾値よりも高いか低いかによって介入群もしくは比較群への割り付けが決まるデータに対して使用することができる。図1に例示する時系列データでは,閾値0の時点で介入が行われた仮定で,介入群と比較群の成績の推定値を各回帰直線のようにあらわすことができる。このとき,閾値のすぐ両脇にある被験者を比較した値(平均値差)を条件付平均介入効果と呼び,教育的介入による効果の大きさの指標とされている。図1の場合,閾値0の地点における介入群と比較群の成績推定値の差が条件付平均介入効果となる。なお,同一被験者の表3 クォーター制における共通教科書の運用計画教員1担当Unit教員2担当Unit1週目第1回Unit 1第2回Unit 22週目第3回Unit 1第4回Unit 23週目第5回Unit 3第6回Unit 24週目第7回Unit 3第8回Unit 45週目第9回Unit 5第10回Unit 46週目第11回Unit 5第12回Unit 67週目第13回まとめと復習第14回まとめと復習,期末試験(教員2)8週目第15回まとめと復習,期末試験(教員1)

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