日本大学生産工学部 研究報告B(文系)第52巻
15/28

─ 13 ─得する必要のある表現」が分かる。また,学習者が統計的に過剰使用している単語に注目することで,学習者が「繰り返し用いている表現」(多くの場合は,他の表現に言い換え可能な表現)が明らかになる。4.5 n-gramライティングにおける文体的特徴を分析する場合は,文章におけるn個の要素の連鎖であるn-gramを抽出する。まず,習熟度の高い学習者のライティングとそうでない学習者のライティングにおける高頻度な単語n-gramを抽出し,両者を比較することで,「よりよい英語を書くために習得する必要のある表現」や学習者が「繰り返し用いている表現」を具体的に把握することができるようになる。また,品詞の連鎖からなる品詞n-gramを抽出することで,ライティングのトピックの影響を軽減し,より抽象化・一般化されたレベルで文体的特徴を分析することが可能になる。単語n-gramや品詞n-gramは,ライティングの自動採点でも頻繁に用いられる言語項目であるため(小林,2017)42),自動採点システムと連携したフィードバックシステムでも活用することは理にかなっている。5.まとめ本稿では,これまでの自動採点やフィードバックに関する理論と技術を概観し,自動フィードバックで活用できる言語項目について議論してきた。今後,実際のシステムを開発するにあたっては,前段で議論したように,フィードバックの粒度について検討する必要がある。たとえば,システムが扱うことのできる全ての項目フィードバックを与えるか,任意に設定した言語項目のみに限定するか,を選択できるようにする(フィードバック対象の選択)などが考えられる。また,文法的誤り訂正に関しては,誤りを含む箇所を指摘するのみか,誤りの種類をヒントとして示すか,正解候補を直接示すかなどを調節できることが望ましい(フィードバックの明示性の選択)。そして,教員や学習者にフィードバックを提供する際,どれぐらい詳細な情報を提示するか,どのような形式の図表や文章を用いるか,などについては,診断的フィードバックに関する実証的研究(e.g., Roberts & Gierl, 2010)43)の知見を活用すべきである。謝辞本研究はJSPS科研費17K13511およびJSPS科研費16K16885の助成を受けたものである。注注1)たとえば,以下のプレスリリースを参照。https://www.eiken.or.jp/eiken/info/2018/pdf/20181017_pressrelease_aisaiten.pdf注2)文法誤り検出・訂正の研究動向については,永田(2017)44)に詳しい。注3)http://www.cis.uni-muenchen.de/~schmid/tools/TreeTagger/注4)http://ucrel.lancs.ac.uk/claws/注5)https://nlp.stanford.edu/software/lex-parser.shtml注6)http://bllip.cs.brown.edu/resources.shtml# software注7)http://www.personal.psu.edu/xxl13/downloads/l2sca.html参考文献1)大関浩美(編)『フィードバック研究への招待―第二言語習得とフィードバック』,くろしお出版,2015.2)Shermis, M., & Burstein, J. (Eds.), Automated essay scoring: A cross-disciplinary perspective. New York: Routledge, 2003.3)Shermis, M., & Burstein, J. (Eds.), Handbook of automated essay evaluation. New York: Routledge, 2013.4)Ueno, M., Web based computerized testing system for distance education. Educational Technology Research, 28, 2005, 59-69.5)Shin, D., Min, H., Park, S., Jung, C. K., Joo, H., & Kim, M., Validation research for developing and applying the automated scoring program for the speaking section of the NEAT. The Abstract Book of the 35th Annual Language Testing Research Colloquium, p. 44, 2013.6)Page, E. B., Project Essay Grade: PEG. In Shermis, M., & Burstein, J. (Eds.), Automated essay scoring: A cross-disciplinary perspective. New York: Routledge, 2003, 43-54.7)Elliot, S., IntelliMetric: From here to validity. In Shermis, M., & Burstein, J. (Eds.), Automated essay scoring: A cross-disciplinary perspective. New York: Routledge, 2003, 71-86.8)Landauer, T. K., Laham, D., & Foltz, P. W., Automated scoring and annotation of essays with

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る