日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第53巻第2号
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─ 17 ─示す1.5程度の高C/S型のC-S-H22),23)と同数となっている。以下同様に計算すると,養生時間が長くなるにつれてC/S比は低下し,養生時間200時間の場合は1.49,養生時間500時間の場合は1.41まで低下した。さらに,これらC-S-Hが生成するCaO:SiO2=40:30(mass%)程度付近から,CaO:SiO2=0:100(mass%)付近に分布している珪石微粉末(Q),またはシリカフューム(SF)までの境界付近を詳しく観察すると,養生時間が3時間の場合に対し,200時間,500時間の場合において,C-S-Hの分布領域の形状が異なっていることがわかる。養生時間が3時間の場合,Y軸に平行な楕円形に対し,養生時間が200時間を超える長時間の場合は,珪石微粉末またはシリカフュームが明示されるSiO2=100%(mass%)方向に向きを変える傾向が認められた。さらに,500時間の場合は分布がやや細長くなる傾向が認められた。4.考察本実験で得られた試験結果を用いて総合的に考察すると,圧縮強度試験結果において,シリカフューム添加率の違いによりオートクレーブ養生時間が200時間以降で挙動がそれまでとは異なってくる。本実験範囲で最もシリカフュームの添加率が高い10%の場合,養生時間300時間以降で大幅に圧縮強度が低下し,シリカフュームを添加してない0%および添加率5%の場合においても,養生時間500時間で圧縮強度は低下した。従来,シリカフュームを含むセメント硬化体をオートクレーブ養生した場合,水熱反応によって水和が促進し,さらにシリカフュームによるポゾラン反応も加わることでC-S-Hの生成量が増加する。7),8),9)そのため,シリカフュームを添加していない0%の場合は,セメントと珪石微粉末が持つSiO2がシリカ源となるため,シリカフュームを添加した5%,10%の場合に比してC-S-Hの生成を意味する3-6nmのゲル空隙量は少ない傾向となっている。さらに,全水準の中で最高強度が得られた養生時間が200時間や300時間の場合は,C-S-Hの生成による緻密化によって高強度を発現したと考えられるが,ゲル空隙よりも粗大な空隙となる毛細管空隙量も僅かに増加していることが認められている。圧縮強度が極端に低下した養生時間が500時間の場合においては,毛細管空隙の増加が顕著であることから,内部に粗大な空隙が形成され,微細構造が粗大化したことにより,強度低下が起きたと考えた。これに,粉末X線回折結果によるオートクレーブ養生時間と圧縮強度増加に比例して認められた11Å Tobermoriteの回折ピークおよびピーク面積による反応性も考慮すれば,本実験の範囲内でその生成量が明らかに最大となった養生時間500時間の場合において圧縮強度は極端に低下している。これは11Å Tobermoriteの生成量が,本研究で対象としている高強度コンクリート二次製品を対象とした場合の強度発現性に関与することを示すものである。つまり,長時間のオートクレーブ養生によって,細孔空隙に関する検討結果による6-50nmの毛細管空隙量が増大し,全空隙量が増加する内部の微細構造の粗大化が圧縮強度低下の要因であると考えた。これらは,EPMAによるオートクレーブ養生前または養生初期の高C/S比からは,11Å TobermoriteのC/S比0.83に対応するC/S比分布は確認されなかったものの,C/S比が1.87,1.49,1.41へと低下する結果が認められていることに加え,Fig.8~Fig.10の第4象限に示す元素定量画像を詳しく観察すると,養生時間に比例してCaO/SiO2=1.2~0.8(mass%/ratio),つまり1.1~0.7程度のC/S比の領域が顕著にFig.12 CaO-SiO2 concentration map(200hrs.)CaO concentration (mass%) SiO2 concentration(mass%) Fig.13 CaO-SiO2 concentration map(500hrs.)CaO concentration (mass%) SiO2 concentration (mass%)

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