日本大学生産工学部研究報告A(理工系)第53巻第2号
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─ 16 ─結果を示す。なお,ここでは11Å Tobermoriteの回折角度が他の生成水和物と干渉しない回折角7.8°(002面)付近21)で検討を行った。この結果によれば,どのシリカフューム添加率の場合においても,養生時間が200時間で極僅かな反応が認められ,毛細管空隙量の増加に伴い圧縮強度の低下が認められた養生時間300時間,500時間の場合において,11Å Tobermoriteの回折ピークが全水準で確認できた。3.4 EPMAによるC-S-H組成に関する検討結果Fig. 8,Fig. 9,Fig10に反射電子画像とEPMAによるCaOとSiO2のmass%およびCaO/SiO2モル比の分布画像の一例として,シリカフューム添加率が10%の結果を示す。この結果は,オートクレーブ養生時間が3時間の場合および500時間の場合であるが,オートクレーブ養生による水熱反応による水和の進行に伴い,CaO濃度は平均化し,SiO2濃度は非クリンカ部分では上昇している。そこで,Fig.11,Fig.12,Fig.13にそれぞれの濃度をプロットしたシリカフューム10%の場合のCaO-SiO2分布図の一例を示す。なお,ここでの検討は,2.4.4で述べた通り3つの視野で行っているため,各視野の測定結果を青・赤・緑で示している。まず,未水和のセメント鉱物であるエーライト(C3S)はCaO:SiO2=70:25(mass%)付近に分布し,ビーライト(C2S)はCaO:SiO2=60:30(mass%)付近に分布していることがわかる。セメントの水和によって生成したC-S-Hは,CaO:SiO2=40:23(mass%)付近に分布しているが,養生時間によってその分布範囲は異なり,養生時間の増加に伴いSiO2リッチ側にシフトしている。このC-S-H中のCaO/SiO2mol比(以下,C/S比)は,3つの視野(青・赤・緑)が重なり,色が濃く示されている分布(紺色分布)の中央部が平均的な組成と判断して計算すると,オートクレーブ養生時間が3時間の場合は1.87となり,一般の通常セメントの水和反応でFig.11 CaO-SiO2 concentration map(3hrs.)CaOconcentration (mass%) SiO2 concentration (mass%) Fig. 9 CaO and SiO2 image(200hrs.)Fig.10 CaO and SiO2 image(500hrs.)Fig. 8 CaO and SiO2 image(3hrs.)

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