日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第52巻第1号
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─ 6 ─dx)を阻止能とよび,VPHはこれと相関する。これらを用いて粒子の識別を行った。現像作業が終了しても,実際に原子核乾板に飛跡が記録され,物理解析に使用できなければ意味がない。そこで,物理解析に使用できるかどうかの性能評価項目として,乳剤層の厚み,飛跡検出効率,粒子識別能力,ニュートリノ反応の検出結果を用いた。5.結果および考察ニュートリノビーム照射後の原子核乾板すべてについて,予定した実施期間で現像処理および膨潤処理を完了した。結果と考察を以下に示す。5.1 原子核乾板乳剤層の厚み乾燥作業後の全原子核乾板乳剤層の厚みを測定し分布図としたものをFig.5に示す。横軸が厚み[μm]で,縦軸は測定データ数を示す。乳剤層全体の厚みは70±3μmとなり,原子核乾板を目標通りの厚みまで膨らませることができた。Fig.5 Distribution of emulsion layer thickness at the lms after swelling8).5.2 原子核乾板の飛跡検出効率今回の評価方法に基づく原子核乾板ごとの飛跡検出効率をFig.6に示す。Fig.6の横軸は原子核乾板の通し番号,縦軸が飛跡の検出効率[%],各プロットの色は飛跡の角度に対応している。ほとんどの原子核乾板で,飛跡の検出効率は95%以上を示した。飛跡の角度範囲tanθが0.0~0.3の場合では,全枚数の96%で検出効率95%以上を達成した。大角度と呼ばれる領域も含めた測定可能な全角度範囲(tanθ=0.0~1.6)では,全枚数の94~99%(角度依存性あり)で検出効率90%を達成した。5.3 荷電粒子の識別荷電粒子の識別方法のひとつをFig.7に示す。これは横軸に実験で得られた粒子の運動量pβ[GeV/c]を,縦軸にはVPHをとったものである。運動量は,原子核乾板内の多重電磁散乱から測定した19),20)。一方,横軸に粒子の運動量pβ[GeV/c]をとり,縦軸にdE/dxをとった理論カーブが,Fig.8である。原子Fig.6 Track-detecting eciency for each lm.Fig.7 A plot of VPH vs. track momentum pβ.Fig.8 Theoretical plot of dE/dx vs. track momentum pβ. The upper right curve is a theoretical line of proton and the lower left dotted curve is a theoretical line of muon.

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