日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第52巻第1号
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─ 4 ─3.2 実験装置現像に用いる水として,水道水からカートリッジ式の純水器(G-10DSTSET[オルガノ社製])により不純物を除去したものを用いた。現像液の液温管理には冷却・加熱可能なマルチサーマルユニット(SMU-60C[三商社製])を使用した。溶液の温度管理を容易にするために,エアコンの設定温度を液温の目標温度と同じ20℃とした。室温の温度モニターは,当初はデジタル温湿度測定器(HN-CH[チノー社製],EL-USB-2[Lascar Electronics社製])を用いローカルで管理していたが,その後web上から温湿度の監視が行える遠隔式温湿度測定装置(おんどとり,TR-72ef[T&D社製])を導入したため,暗室の温湿度は10分間隔での監視が可能となり,暗室のエアコンが正常に稼働していることや,現像室,乾燥室(準備室)の環境に異常がないかを暗室外部から確認できる環境を構築した8)。これは複数大学が参加している実験では非常に重要で,日本大学から物理的に離れている研究室からも現像室環境のモニタリングが可能となった。4.原子核乾板の現像と膨潤処理以下に原子核乾板の現像処理と膨潤処理の作業手順等を順に記述する。原子核乾板の現像処理には,薬品の液温管理が極めて重要となる。各液に対し要求される温度条件等をTable 2にまとめた。また,各液の調液処方がTable 3である。Table 2 Required temperature and processing time for each chemical solution.液量[L]温度[℃]時間[min]現像液5420.0±0.225停止液4120.0±0.510定着液4120.0±0.560〜120水洗-室温60以上Table 3 Required contents and quantities for each chemical solution.種類内訳液量[L]現像液OPERA実験用現像液0.250Demineralized water0.750RD-S0.020停止液Acetic acid0.005Demineralized water1.000定着液NF-10.333Demineralized water0.666水洗tap water1.0004.1 現像処理原子核乾板の現像処理においては,明室状態で調液等準備をし,暗室状態で現像を実施した。現像作業期間は,2016年5月28日~2016年6月6日で,現像作業手順は以下の通りである8)。現像室を明室状態にし,現像液(54L),停止液(41L),定着液(41L)を,Table 3の組成をもとに調液した。その際,使用した現像缶は市販品にはないために,ステンレス槽(内寸:350mm(W)×550mm(D)×300mm(H),SUS304)を特別注文した。各溶液の液温管理のため,プラスチック製外浴槽を水で満たしマルチサーマルユニットとヒータ(F-002[Fine社製])で温度調整し,現像液20.0±0.2℃,停止液20.0±0.5℃,定着液20.0±0.5℃を実現した。次に,現像室を暗室状態にし,現像,停止,定着,水洗の処理を施した。処理時間は,現像液に25分,停止液に10分,定着液に60~120分(原子核乾板の乳剤層が半透明になるまでの時間の2倍)順次浸し,その後,60分以上の水洗を行った。その際,原子核乾板の表面に水滴が残り乾燥ムラによる乳剤膜の歪みができるのを防ぐため,水滴防止剤ドライウェル(富士フイルム)水溶液に数秒間浸した。その後,原子核乾板を現像室から準備室へ移し,スチールラック(乾燥棚)に吊るし一晩以上乾燥させた。また,現像前後の原子核乾板の厚みを,厚み測定器(ダイヤルシックネスゲージ 目量0.01mmタイプ ピーコック形式:G)を用い,1μm単位で原子核乾板の四隅を時計回りにそれぞれ測定した。尚,現像液の処理能力から一日の最大処理枚数を54枚と設定した。現像缶内で原子核乾板同士が接触しないように一度に8枚ずつの現像を基本とし,一日に48枚から最大54枚の現像と乾燥を行った。4.2 膨潤処理原子核乾板は,現像を行うと乳剤層の臭化銀が溶解すFig.4 Floor outline of the development and preparation rooms with shade enhancement points8).

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