日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第52巻第1号
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─ 35 ─2.2 調査概要⑴ 調査期間中層および高層住宅の研究対象とした「幕張ベイタウン」について第1回調査 2010年7月,8月,9月第2回調査 2012年7月,8月超高層住宅の研究対象とした「大川端リバーシティ21」について第1回調査 2002年8月第2回調査 2005年7月,8月⑵ 調査方法調査方法:既往研究2)−10)を参照し,ア居住者の認知特性を明らかにするため現地にて圏域図示法注3)を用いて,調査を行った。調査は「認知領域調査」と「構成要素注4)に関する調査」から成る。「認知領域調査」では,白地図を使用し,調査対象者に対して,「あなたが私のまち(よく知るまち)と感じる範囲はどこですか。地図に囲んでください。」などの設問に対する認知領域を描画してもらう。なおこの際,被験者には「○○の認知領域を描画して下さい」と依頼するのではなく,「○○と感じる範囲」を描画してもらえるよう依頼している。認知領域を白地図に描画して貰った後に,「構成要素」に関する聞き取り調査を実施して構成要素を抽出する。聞き取り調査は描いた領域を描画した「範囲付け理由」と「要素」から抽出する。調査員による実際の「範囲付け理由」の問い掛けは,「領域について思い出すもの,印象的なもの,特徴的なものを数に限りなく挙げてください」という問いである。「要素」の問い掛けは,「領域を囲んだ時,何がその範囲を決める基点・基準・理由となりましたか?数に限りなくあげてください」という問いである。どちらも回答をこちらで限定することのないように「建物・名称・樹木・看板・音・香りなど,何でも結構です」と補足しながら行う。「構成要素」を「要素」の聞き取りのみでなく,「範囲付け理由」の問いかけも行うことにより,実際の聞き取り調査においては,回答者が「要素」と「範囲付け理由」を明確に区分して回答するのではなく,重複して一体的に回答することがあり,「構成要素」と「範囲付け理由」の聞き取りを当時に行った。また,本研究が「時間変動要素注5)」を構成要素としてとらえていくことも「範囲付け理由」を調査した原因の一つである。なお,聞き取りが円滑に進むように聞き取り調査中の重複を認めたが集計においては一つの項目として集計した。主な調査内容注6)はTable3に示す。2.3 分析方法本研究ではまず,「居住階層」に着目し,同じ居住階層の範囲にて中層住棟・高層住棟・超高層住棟における「居住階層」による認知領域面積の相違と上下階の(垂直方向)「近隣住民」としての認知領域の相違を分析する。以上により中層住棟・高層住棟・超高層住棟における居住階層による環境認知の形成を分析・考察する。3.中層住棟・高層住棟・超高層住棟の「居住階層」による認知特性本章では中層住棟・高層住棟・超高層住棟における各階層の認知領域面積の定量的な分析により,認知特性を考察する。まず,「認知領域調査」で描かれた範囲の面積を算出・集計し,居住階層ごとの平均認知領域の面積を算出する。Fig.3は算出した中層住棟・高層住棟・超高層住棟における各居住階層の認知領域面積の平均値をもとに,右から左に従い認知領域の広がりの面積ごとに明示したものである。図中の棒グラフは平均認知領域の面積を示し,居住階層の相違に伴う各階層の平均認知領域の相違を示している。同じ居住階層の範囲にて項目毎に中層住棟・高層住棟・超高層住棟の認知領域の構成を左側(中層住棟),中央(高層住棟)右側(超高層住棟)で比較する。低層部(中層住棟),中層・高層部(中層住棟以上の高層住棟部分),超高層部(高層住棟以上の超高層住棟部分)の階層ごとに分類し,考察を行う。⑴ 「にぎわい」①低層部・中層住棟において下部階層の認知領域は最も広く,上部階層へ狭くなる。・高層住棟において中央部階層は最も広い認知領域を形成。・超高層住棟において上部階層の認知領域は最も広く,下部階層へ狭くなる。②中層・高層部・高層住棟と超高層住棟とともに中央部階層は最も広い認知領域を形成。⑵ 「身近な緑地」①低層部・中層住棟において下部階層の認知領域は最も広く,上部階層へ狭くなる。・高層住棟と超高層住棟において上部階層の認知領域は最も広く,下部階層へ狭くなる。Table3 Survey content

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