日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第52巻第1号
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─ 30 ─y=-15.519x+70.162,R2=0.729ここで  y:材齢1カ月の圧縮強度[N/mm2]  x:O/(Si+Al+Fe+Ca+Mg−Na−K)以上のことから,本実験の範囲並びに考察の範囲では,FAを混合したモルタルの材齢1ヵ月の圧縮強度は,ガラス質のモル比組成すなわちO/(Si+Al+Fe+Ca+Mg−Na−K)と相関が高く,この式を用いることによりおおよその圧縮強度が推定できることが判明した。なお,この結果は,ガラス質の連鎖の長さを長くするnetwork formerと連鎖を切って短くするnetwork modierがあり,modierは通常アルカリ性元素が対応するが,CaとMgがプラス(+)の符号で最適値を得たことから,FAモルタルでの圧縮強度を考える上では,単にFAのガラス質の反応性だけでなくセメントの水和反応やFAのポゾラン反応も影響していると考えるべきであり,この複雑な系において元素の振る舞いを相関係数の高さから逆に推察・判断していくすべきであると考えている。さらにNaとK,CaやMgを同じ係数1として捉えていいのかなど係数の詳細な検討が今後必要である。今回の研究は,サンプル数が限られている中での実験であること,Ⅱ種灰と原粉を同等に取り扱っていることなどの理由から,これ以上の考察を進めることは避けた。今後機会があれば,NaやK,Ca数,さらにはAlやFeの両性金属としてのガラス内での挙動など総合的に考慮して網羅的な研究を進められたらと考えている。結論(1)FAは結晶質とガラス質が含まれており,ガラス質組成が強度増進を起こすポゾラン反応に寄与する。(2)FA混合モルタルの圧縮強度とガラス質組成の相関性は材齢1ヵ月の供試体のものが適している。(3)ガラス質成分は酸素/元素比で示すのがよく,決定係数R2が最も高い場合が0.729であった。この時の横軸は酸素と元素比をO/(Si+Al+Fe+Ca+Mg−Na−K)としたときであり,得られた回帰式は,以下の式で示される。    y=-15.519x+70.162,R2=0.729   ここで    y:材齢1カ月の圧縮強度[N/mm2]    x:O/(Si+Al+Fe+Ca+Mg−Na−K)(4)FAモルタルでの圧縮強度を考える上では,単にFAのガラス質の反応性だけでなくセメントの水和反応やFAのポゾラン反応も影響していると考えるべきであり,この複雑な系において元素の振る舞いを決定係数の高さから逆に推察・判断していくべきである。謝辞本研究は,平成29-31年度JSPS科研費(基盤研究(C),課題番号17K00602,代表者:鵜澤正美)の助成を受けたものである。本研究のフライアッシュのご提供ならびに各種分析に多大なるご協力を賜りました株式会社ジェイペック 審議役 矢島典明様には厚く御礼申し上げる。参考文献1)日本フライアッシュ協会:石炭灰ハンドブック─Coal Ash Handbook─(第6版),p.I-142)加賀谷侑杜,黒岩拓馬:セメントをフライアッシュで置換したモルタルの低熱オートクレーブ養生による圧縮強度特性に関する研究,環境安全工学科卒業研究概要集,pp.55-58(2016).3)佐藤道生ほか,比抵抗に着目したフライアッシュの活性度指数の推定方法,土木学会第66回年次学術講演会,pp.631-632(2011)4)石川嘉嵩,コンクリート用フライアッシュのJISにおける活性度指数に関する-考察,日本建築学会技術報告書,Vol.18,No.40,pp.819-822(2012)5)JISA6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」.6)「Wikimedia Commons」「SiO2.Quarz.2D」SiO2の平面構造体(反応前)7)「Wikimeda Commons」「Kalk-Natron-Glas 2D」平面構造体(反応後)y = -15.519x + 70.162R² = 0.72940424446481.551.651.751.85CompressiveStrength[N/mm2]O/(Si+Al+Fe+Ca+Mg-Na-K)[-]Fig. 10 Relationship between Compressive Strength of One Month and Glassy Composition.

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