日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第52巻第1号
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─ 29 ─の相関性を推定するよりも,より正確な決定係数を得るには,酸素と元素とのモル比でシリカの連鎖を考えることが適切だと考察した。3.6 相関性に対するガラス化量の影響評価Fig.4の決定係数をさらに上げるためにガラス化量も考慮して相関性について検討を行った。ガラス化率とはFAのガラス質組成量の合計であり,Table4の各FAの合計値のことを指す。これに3.5で述べたガラス質構造に着目し,酸素と元素のモル比,つまりO/元素比と表すことにした。例えば,SiO2はSiが1モル,Oは2モルからなるため,O/Si比は2/1=2となる。SiO2+Al2O3では,Alがガラスの連鎖に加わるとすれば,O/(Si+Al)=5/3=1.667となる。Alが入ることで数字が下がるため,ガラス質のネットワークの複雑さが下がることになるという考え方である。O/元素比の式にガラス化率を掛けたものを横軸としてFig.7を作成した。決定係数がFig.4の0.379から0.502と少しではあるが上昇した。このことから,ガラス質の取り扱いを化学成分のモル単位で考えること,ガラス化率も強度増進に影響を与えていることが確認できた。他方,ガラス化率を考慮しないで化学成分のみに着目した場合をFig.8に示した。横軸にはさらに化学成分数を増やしO/(Si+Al+Fe+Ca+Mg+Na+K)比としたが,相関性は決定係数0.669と向上した。今後の検討は,モデルを単純化するためにガラス化率を除いて比較することにした。3.7 アルカリ成分の作用を考慮した相関性ここでは,FAにおけるアルカリ成分の挙動変化を視野に入れた調査を行った。アルカリ成分は連鎖を短くして活性を上げる性質があることはすでに述べている。3.6では主要元素を単にプラスの符号をつけて表記したが,アルカリ成分が連鎖を短くするため,マイナスの符号にすることを検討した。横軸にアルカリ成分をマイナスにしたO/(Si+Al+Fe−Ca−Mg−Na−K)比とした場合の図をFig.9に示した。なお,横軸の数字は分母が小さくなるため他の図に比して大きい。結果としては決定係数が0.703と3.8の場合より高い相関性を示したが,左側にプロットが集中しているため相関性については懐疑的である。このことから圧縮強度においてアルカリ成分はマイナスに作用することも視野に入れるべきであることが確認できた。また,アルカリ成分の中でもアルカリ金属に属するNaとKのみに着目しNaとKがマイナスの挙動を示すことを検討したO/(Si+Al+Fe+Ca+Mg−Na−K)比を横軸にした図をFig.10に示した。結果としては0.729とより高い相関を得ることができた。プロットも比較的均等に分布しているため,相関性も高いものと考えている。以上の点から材齢1ヵ月の圧縮強度を推定する場合はO/(Si+Al+Fe+Ca+Mg−Na−K)比で考えるのが現状では最も良いと確認できた。最終的に得られた回帰式を下記に示す。y = -17.173 x + 68.202 R² = 0.502 404550551.21.41.6CompressiveStrength[N/mm2]O/(Si+Al+Ca)×GlassContent[-]Fig. 7 Relationship between Compressive Strength of One Month Age and Glassy Composition.R² = 0.669 40424446481.401.501.601.70CompressiveStrength[N/mm2]O/(Si+Al+Fe+Ca+Mg+Na+K)[-]Fig. 8 Relationship between Compressive Strength of One Month Age and Glassy Composition.R² = 0.703 40424446482.004.006.008.0010.00CompressiveStrength[N/mm2]O/Si+Al+Fe-Ca-Mg-Na-K)[-]Fig. 9 Relationship between Compressive Strength of One Month Age and Glassy Composition.

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