日本大学生産工学部 研究報告A(理工系)第52巻第1号
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─ 26 ─なることから強度増進に差異が発生してしまう。これらの欠点から,FAは強度増進のためではなく,ワーカビリティ(作業のしやすさ)と水和発熱を抑える低発熱コンクリート用の混和材としての認知が大きい。一方,製鉄からできる高炉スラグもセメント・コンクリート用混和材として利用されている。高炉スラグはFA同様,コンクリートの強度を高めることができるが,強度増進の時期が養生1ヵ月以内とかなり早い。早期の緻密化ができるため一般用途から海水域に使用できるなど用途が広く,セメント分野の材料としてはFAよりも優位な位置づけにある。本プロジェクトはFAを高炉スラグ並みの活性に高めることを最終の目標としている。余剰のFAを高度なセメント混和材化する手法を検討することである。これまでアルカリ刺激を与えたペーストの比抵抗を計測することで,材齢28日の活性度指数を迅速に推定する方法3)やFAの材齢28日における活性度指数を,初期材齢での積算温度を考慮することで,早期に推定する方法4)に着目した研究はあるが,ガラス質に着目した研究例は少ない。そこで本研究では,FAを添加したセメントの圧縮強度をFAの組成や構造から,そのガラス質に着目し強度推定ができないか可能性を探った。すなわちFAのガラス質組成を検討し,FAを混合したモルタルの強度を測定することによって,組成と強度の関係を導き,試験をすることなく化学組成と鉱物組成から計算された経験式によって圧縮強度を推定することを目的とした。2.実験方法2.1 使用材料・供試体の配合本研究では普通ポルトランドセメントの25%をFAに置換したモルタルの圧縮強度からFAの活性度指数を求めた。FAは全部で7種類(Ⅱ種または原粉)であり,含有鉱物の種類は同じであるが成分比率は異なる。使用材料は水道水(W)・普通ポルトランドセメント(C)・FA・JIS標準砂(S)とした。FAの化学組成,鉱物組成をTable1,Table2に,FAモルタルの配合表をTable3に示した。この配合はJIS A 6201を参考にしてセメント置換率を25%としている。圧縮強度から各FAの活性度指数を求めた。2.2 使用道具・供試体の作製方法供試体の作製はJIS R 5201を参考にして行った。練り混ぜにはモルタルミキサー,型枠にはφ50×100mmのスチール製円柱型枠を使用した。以下,①~⑧に作製手順を示す。①ミキサーに水・セメント・FAを入れて低速で30秒 ②低速のまま30秒間かけて砂を入れる ③高速に切り替え30秒 ④ミキサーを90秒間停止 ⑤再び高速に60秒かけ,取り出す ⑥ヘラで10回かき混ぜる ⑦三層に分けて隙間なく型枠に詰める ⑧24時間後,固まった供試体を型から取り出し,水中に養生した。2.3 供試体の圧縮強度試験圧縮強度試験はJIS A 6201 附属書2に準拠して測定した。荷重速度は0.2 N/secで行い,供試体は規格条件に合うよう,研磨機で形成した。なお供試体は4本ずつ測定し,その平均を測定値とした。Table 1 Chemical Composition of FA (mass%).SampleSiO2Al2O3Fe2O3CaOMgOSO3Na2OK2OBlaine (cm2/g)Ig.loss (mass%)FA152.7629.124.974.491.790.300.500.9846502.56FA252.8528.764.704.401.530.290.490.9043103.64FA355.3325.194.544.241.120.301.191.2836703.74FA463.2122.364.892.530.980.280.541.3940402.11FA560.4826.224.001.570.820.320.411.4743502.19FA651.9121.5410.004.172.370.800.872.0047204.75FA761.0524.514.722.570.990.250.321.2835602.02Table 2 Crystalline Composition of FA (mass%).SampleQuartzMulliteMagnetiteFA16.5419.410.59FA26.4920.420.47FA310.8316.730.79FA416.3916.731.25FA512.2622.550.83FA613.9111.522.82FA714.6020.981.18Table 3 Composition of FA mortar.FA/(C+FA)(%)(kg/m3)WCFAS0225.0450.00.01350.025225.0337.5112.51350.0

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